第1章 序論:物質とエネルギー - 豊かな市民生活を送るための物質科学リテラシー

物質は「質量のあるもの。場を成立させるものを指すことが多い。基本的には、電磁場の粒子である光子なども含めて、素粒子およびその結合体であり、空間・時間のなかに位置し、大きさ・形・質量および運動の可能性をもつもの」と定義される1。この定義を待つまでもなく、衣食住に密接に関係した物質をはじめとして、われわれの身の回りは物質で構成されている。いや、われわれの体自身も物質から成り立っている。

この物質界について、物理学と化学が明らかにしてきた物質像、さらに最近では材料科学、電気・電子科学、情報科学、生物物理学、生物化学、薬科学、環境科学が付け加えてきた先端的知見のうち、科学リテラシーとして市民と共有したい事柄をとりまとめる。最も重要なのは次の4点であろう。

1)物質は豊かな市民生活を営むために必要なエネルギーと切っても切れない関係にあり、エネルギーの担い手である。物質はエネルギーの授受により様々な変化をし、地球規模で循環する。

2)物質の根源は原子であり、その細部から身の周りの大きさの物体に至るまでに様々な階層がある。またそれらを束ねる相互作用(力)にも階層性がある。

3)物質に人の利用意図が反映されるとき材料と呼ぶ。材料で重要なことは物質そのものではなく、物質の性質である。材料として重要なことは、その性質がより優れていることであり、それは利用目的とともに、地球環境の持続的発展に合致しているということである。

4)物質は他の物質からエネルギーの授受を行うだけでなく、「場」との相互作用がある。