1.1 文明を支える物質

石器文明に始まり現代に至るまで、自然由来であるか人工物であるかを問わず、物質は身の周りにあって人間の生存・文化・社会・経済活動の基盤となり、文明を支えてきた。その例は、石器文明に始まり、鉄器文明、印刷技術が契機となった宗教改革、蒸気エンジンと産業革命、シリコンチップとIT革命などの歴史的キーワードに見られるように、枚挙に暇がない。文明を支えた物質が石器、青銅器、鉄器と変遷することからも分かるように、人が物質を利用する際に問題となるのは、物質の種類ではなく、物質の示す固有の性質である。農耕作業用具、狩猟・戦用武器、食器、装飾器具などに必要な優れた性質をもつ物質がみつかると、土器から、石器、青銅器、鉄器へと材料は替わってきた。力学的、熱的、電気・電子的、磁気的、化学的、生化学的性質の優れたものを求めて、人類の物質に対する理解と利用は進歩してきた。

21世紀には、人類がいかに賢く、有限な資源を無駄にせずに、最適な物質を(再利用に配慮しつつ)地球環境の持続性(Sustainability)に配慮して使っていくかが、豊かで安全な生活を営む上で重要となる。