1.2 エネルギーと我々の生活

エネルギーという言葉は、異なるいくつかの文脈で使われる。エネルギーの定義は「物質が内蔵する仕事をする能力」である。この概念はニュートンに始まり、19世紀の初頭に確立した。エネルギーには力学エネルギー(運動エネルギー、位置エネルギー)、電気・磁気エネルギー、光エネルギー、熱エネルギー、化学・生物エネルギー、核エネルギーなどの種類がある。これらを担うのは物質であり、物質はこれら各種のエネルギーの間の変換によって姿を変える。一つの形態のエネルギーが無くなるときにはそれと等しい量の別の形態のエネルギーが生まれる。

水力発電を考えてみよう。山地などの高い所にある水はダムに蓄えられ、そこから低い位置にある発電所まで落下して発電機を回転させる。この場合、水の位置エネルギーは激しい勢いで落下する水流の運動エネルギーに変換され、この運動エネルギーはさらに発電機のタービンが回転する運動エネルギーに変換される。発電機の機能はさらに回転エネルギーを電気エネルギーに変換する。こうして水の位置エネルギーが最終的に電気エネルギーに生まれ変わる。その元をさらに辿ると、水の位置エネルギーは太陽の熱エネルギーが海などの低地ある水を水蒸気に変え、それによって水分子が上空に浮上することによって得られたものである。このように考えると、水力発電による電気エネルギーは、太陽のエネルギーを元に種々の形態のエネルギー間の変換を経て生じるということがわかる。

エネルギー変換には熱の出入りが伴う。あるエネルギーを全て熱に変えてしまうことは簡単だが、熱を全て他のエネルギーに変えることはできない。上の例では、発電機が回転するときの摩擦によって発生する熱エネルギーは周囲に拡散し、利用することはできない。(2.2「物質の変化の原理とエネルギー」の項参照)

エネルギーを生み出すことのできる資源は様々であるが、そのいずれに依存しているかは国によって異なる。1970年代には日本は一次エネルギー(石油、石炭、天然ガス、原子力、水力、地熱など、実際に使用する前のエネルギー源のことをいう)の70%以上を石油に依存していた。2004年度には、石油依存度は約48%、石炭21%、天然ガス14%で、これらを加えると化石燃料の合計は約83%となっており、また全体の11%は原子力である2)。その他は水力4%、新エネルギー・地熱3%となっている。長い時間をかけて地下に蓄えられた石炭、石油、天然ガスなどの化石燃料を短期間に大量に使うことにより、蓄積された炭素成分が二酸化炭素として放出され、地球環境が急激に変化する事態に直面している。